因みにこの祖母、2年前に亡くなりましたが、なんと享年107歳。
大往生でした。
さて、祖母が「おかいこ様」というのをよく聞いていましたが、
子供ながらに、虫に「お」を付けて、しかも「様」まで。
不思議だなあって思っていました。
一昔前までは、日本中で養蚕が盛んでしたよね。
田舎に行くと、どこにも桑畑があったものです。
私は東京都小平市の出身ですが、
近くに蚕糸科学研究所というのがありました。
私たちはカイコ研究所と呼んでいましたが、
桑畑の真ん中に鉄筋コンクリートの研究所がありました。
私が子供の頃にはすでに廃墟で、
地下室に雨水がたまっていたり、
窓ガラスが割れていたり、
さながらお化け屋敷のような様子でしたが、
ドキドキしながら中を探検したものです。
今では日本で蚕を育てている光景にあうことはめったになくなりましたが、
蚕には全く別の利用法があるのです。
私たちは、蚕を使って、実験をしています。
普通、実験動物といえば、マウスやラットなどの哺乳類を使いますよね。
でも、蚕を実験動物として使うことには大きなメリットがあるのです。
まず、値段が安い。
マウスやラットを使う場合に比べて数百分の一のコストで実験ができます。
逆に言うと、同じコストで数百倍のモノを試せる訳です。
そもそも哺乳類を使って、いろいろなモノを試してみる、
なんていう研究は、動物愛護団体が黙っていません。
倫理的にアウトなのです。
でも、今のところ蚕についてはそういう意見は聞こえてきません。
今、医薬品になる可能性がある物質を探す場合、
コンピューターによるシミュレーションか、
試験管内で実験をするのが通例です。
でも、蚕という動物の個体を使うことで
はるかに精度の高い実験ができるのです。
戦国自衛隊という角川映画をご存知ですか。
自衛隊がタイムワープして、
戦国時代に行ってしまうという話です。
私たちの研究所長は、
この映画の中で
戦国武将が竹やりで自衛隊のヘリコプターを落とすシーンに例えて、
蚕の技術で大手の会社を打ち負かすという話を良くしています。
私たちは、すでにカイコの糖尿病モデル、肝障害モデル、脂質異常モデル、
などを作って、日々研究を行っています。
そう遠くないうちに、これらに有効な成分を発見することができるでしょう。