夫が亡くなった後のことを考えて不安になったことはありませんか?あまり考えたくないことだとは思いながらも、生活面での変化や経済的なことが気にかかるという人も多いのではないでしょうか?
健康や住まいなど、老後の生活に欠かせないものはたくさんあります。その中のひとつが、お金です。夫婦間で将来のことを話しあっているという場合でも、夫亡き後に支給される年金についてはあまり良く知らないという人もいるのでは?
この記事では、夫が亡くなった後に妻が受け取れる年金について紹介していきます。年金は、老後の生活の一つの柱となるもの。いざという時に少しでも迅速に対応できるように、また将来の不安を減らすためにも年金のことを把握しておくと安心です。
請求しないともらえない「未支給年金」を知っておこう
老後の支えのひとつになるのが国民年金(老齢基礎年金)。20201年(令和3年)度の1ヶ月の支給額は満額で65,075 円です。この国民年金で意外に見落とす人が多いのが「未支給年金」の請求。
国民年金(老齢基礎年金)は、受給者の死亡届を提出すると支給停止になります。通常、偶数月の15日に前月と前々月の2ヶ月分がまとめて振り込まれるため、タイミングによっては未支給年金が発生することになります。
未支給年金は、たとえ1日でも月をまたいでいれば受給権があります。例えば、4月1日に夫が亡くなったとすると、4月に振り込まれる予定だった2月・3月分に加えて4月分も未支給年金として受け取れるのです。
じつはこの未支給年金。日本年金機構からの通知は一切ありません。そのせいか、もらい忘れてしまう人が多いのだそう。いざという時に忘れずに請求できるように覚えておきましょう。
※未支給年金は、年金支払い日の翌月から5年以上経過すると請求できなくなります。
※請求できるのは、配偶者、子ども、父母、祖父母など3親等以内の親族、血縁者でなくても受け取りは可能で事実婚などの場合も含まれます。
遺族年金とは?
生計を共にしていた夫が亡くなった時、残された妻には「遺族年金」が支給されます。夫が会社員だった場合、夫婦共に働いていた場合、夫が自営業だった場合で受け取れる年金の種類や金額が変わってきます。
遺族厚生年金の受け取り金額の計算方法
1.夫が会社員で妻が専業主婦の場合
会社員の夫が亡くなった場合は、「遺族厚生年金」を受け取れます。専業主婦の場合は、厚生年金に加入していないため、受け取り金額は夫が受け取るはずだった老齢厚生年金の75%の金額です。この場合、妻が受け取れる年金額は下記のようになります。
妻自身の国民年金(老齢基礎年金)
+
夫が受け取るはずだった老齢厚生年金の75%の金額(遺族厚生年金)
※夫が亡くなった場合、夫が受け取っていた国民年金(老齢基礎年金)や企業年金(もらっていた場合)は、支給停止になります。
2.夫・妻ともに会社員だった場合
夫婦ともに会社員として働いていた場合の、妻の遺族厚生年金はどのようになるのでしょうか?
遺族厚生年金は、亡くなった夫の老齢厚生年金の75%が妻に支払われるのが基本です。けれども、妻も働いていた場合は、夫の老齢厚生年金の金額が妻の老齢厚生年金額を上回った分だけが上乗せして支給されることになります。
妻自身の国民年金(老齢基礎年金)
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妻自身の老齢厚生年金
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夫が受け取るはずだった老齢厚生年金の75%の金額を元に計算した額
(夫の老齢厚生年金の75%の金額を算出し、その金額が妻の老齢厚生年金を上回った場合、その差額分を上乗せ)
この場合の注意点は、専業主婦が受け取る遺族厚生年金は非課税ですが、妻自身が働いていた場合に受け取る老齢厚生年金は課税所得となる点です。金額によっては、所得税や住民税、健康保険、介護保険なども負担することになる場合があります。
※亡くなった夫の収入が高ければ、差額として受け取れる老齢厚生年金が増えます。けれども、夫より妻の収入が高かった場合は差額が支給されないこともあります。
※妻の年収が850万円以上あった場合は、生計の維持が可能だとの判断から差額文の上乗せはありません。
※夫が亡くなった場合、夫が受け取っていた国民年金(老齢基礎年金)や企業年金(もらっていた場合)は、支給停止になります。
3.夫が自営業者だった場合
亡くなった夫が自営業者だった場合厚生年金には加入していないので、老齢厚生年金は受けとることができません。亡くなった夫が自営業者で国民年金を支払っていた場合は「遺族基礎年金」が受け取れますが、これは18歳以下の子どもがいる場合に限られます。
では、夫が自営業を営んでいて亡くなった場合は、遺族年金などを全く受け取れないことになるのでしょうか?亡くなった夫が自営業者だった場合、「死亡一時金」または「寡婦(かふ)年金」のどちらかを選択して受け取ることができます。それぞれ受け取れる期間や金額が違いますが、ほとんどの人は金額が多い方を選んでいるようです。
死亡一時金とは?
自営業を営んでいた夫が亡くなった場合。国民年金保険料を納めた期間が 36 月以上あり、なおかつ老齢基礎年金、障害基礎年金のどちらも受け取っていない場合に、「死亡一時金(12~32万円)」が1回のみ受け取れます。
※夫の死亡日から2年以内に請求する必要があります。
※請求できるのは、配偶者、子ども、父母、祖父母など3親等以内の親族、血縁者でなくても受け取りは可能で事実婚などの場合も含まれます。
寡婦(かふ)年金とは?
夫が亡くなった時に、妻の年齢が60~65歳(18歳未満の子どもがいないことが条件)の場合、60~65歳の期間のみ「寡婦年金」が支給されます。支給額は、夫の国民年金(老齢基礎年金)の75%です。
この場合、夫婦の生計が夫の収入により維持されていたこと、国民年金(老齢基礎年金)、障害基礎年金のどちらも受け取らないまま夫が亡くなっていること、10年以上継続して婚姻関係(事実婚を含む)にあったことが条件となります。
※寡婦年金は、夫の死亡日から5年以内に請求する必要があります。
年金についての手続きと見込額
年金について不明な点がある場合は、電話または窓口(予約制)での相談が可能です。近隣の年金事務所に問い合わせをしてみてください。年金の申請用紙は、居住地の役場、または近隣の年金事務所、年金相談センターの窓口に用意されています。
日本年金機構 電話での年金相談窓口
https://www.nenkin.go.jp/section/tel/index.html
日本年金機構 全国の相談・手続き窓口
https://www.nenkin.go.jp/section/soudan/index.html
年金の見込額は、日本年金機構の下記のページで計算することができます。
日本年金機構 年金見込額の試算
https://www.nenkin.go.jp/n_net/n_net/estimatedamount.html
夫が亡くなった時に、妻が受け取れる年金について紹介しました。今回は基本的な年金のみの紹介になりましたが、事前に大まかにでも知っておくことができれば、いざという時にスムーズに進められるのではないでしょうか?また、夫婦間で先々のことを相談する時にも、より具体的な話し合いができるかもしれません。
年金は、老後の生活設計には欠かせないもののひとつです。金額の計算など難しい一面はありますが、積極的に知ることから始めてみてくださいね。