4人に1人が65歳、単身世帯やシニア世代も増加傾向にある現在。核家族化、少子高齢化の影響で、お墓を継ぐ人がいない、お墓が遠方にあって管理が難しい、お墓を残すことが子供の負担になるのではないかなど、お墓に関する困り事や悩みを抱える人は少なくないようです。ほかには、都市部でのお墓の取得が難しくなっていたり、無縁仏が増えていたりというお墓にまつわる問題も増加する傾向にあるのだとか。
先祖や親のお墓をどうすればいいか迷っている、自分や家族のライフスタイルに添った供養の形をみつけたいという方のために、多様化するお墓の種類と供養の方法について紹介していきます。
多様化する納骨の方法
火葬が終わった後の遺骨を、お墓や納骨堂などに納めることを納骨といいます。これまでは、先祖代々のお墓に納骨する方法が一般的でしたが、時代の進化や人々の意識の変化に伴って納骨の方法もかなり多様化してきています。
遺骨は必ず墓地に埋葬しないといけない?
遺骨は、墓地に埋葬するものというのが一般的なイメージですが、じつは必ず墓地に埋葬しなければいけないという法律やルールがあるわけではありません。
「墓地、埋葬等に関する法律(埋葬法)」で決められているのは、「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に行ってはならない」ということだけ。つまり、遺骨をどこかに埋葬しようとする(埋める)場合は、行政機関から墓地として認可された場所(墓地・霊園)に埋めなければいけない。けれども、必要な許可を得た規定内の方法であれば、樹木葬や散骨など他の方法を選択しても問題はないとされているのです。
石碑のお墓は戦後に広まったもの
お墓は、故人の遺骨を埋葬して供養するための場所であり、生きている人たちが墓前で手を合わせる祈りの場所でもあります。現代では、四角い墓石を積み上げた石碑(せきひ)をお墓と呼ぶことが多いですが、この石碑のお墓は戦後に広まったもの。この様式のお墓が一般的になったのは、ここ40~50年のことなのだそうです。
永代供養や自然葬を選ぶ人が増えている
納骨には色々な方法があります。お寺、民間または公営の霊園(継承墓、夫婦墓など)にお墓を造り埋葬する方法。納骨堂に収める永代供養。墓石の代わりに樹木を植えて埋葬する樹木葬(じゅもくそう)、海や山などに遺骨を撒く散骨(さんこつ)、自宅に置く手元(てもと)供養などです。
選択肢が増えたお墓と埋葬法の種類
・継承墓(一般墓)
墓石を建てるお墓。先祖代々継承されるお墓で「○○家之墓」「先祖代々之墓」と刻まれていることが多いです。継承墓に入れるのは、家制度の考えが基本となるため、家の継承者とその配偶者だけとされています。次男や三男が結婚などで独立した場合は、あらたにお墓を建てることになります。現在では、お墓の継承者の同意を得た場合は、例外も認められるようになっています。
・夫婦墓
継承者がいない場合や、子どもへの負担を減らすために選ぶ人が増えている夫婦墓。夫婦二人のためだけに建てるお墓で、永代供養(寺院や霊園が遺族の代わりに供養と管理をすること)が基本です。夫婦墓の場合、お墓の墓標には夫婦の名前を連名で入れるのが一般的。
納骨後、契約期間中は個別墓で供養を行い、15年~30年などの契約期間が終了した時点で、供養塔などへ遺骨が合祀(ごうし=他の方の遺骨と一緒に納骨する方法)される方法です。個別墓のほかには、夫婦で一つの区画を使用する樹木葬、夫婦で納骨堂の一つのスペースを使用する形での夫婦墓もあります。
・納骨堂
墓地に埋葬する以外の方法として、選ぶ人が増えているのが納骨堂です。室内に設けられたロッカー式(仏壇式・墓石式・位牌式などの種類があり)のスペースに、遺骨を収蔵するもので、寺院や宗教法人、財団法人、社団法人、自治体などが運営しています。
昭和の頃の納骨堂は、お墓を建立するまでの一時預かりの意味が強いものでした。けれども近年、お墓の継承者がいなかったり、お墓が遠方にあってなかなかお参りに行けなかったりという悩みを解決する方法として、納骨堂が注目され始めます。今では、交通の便が良い場所にあり管理も簡単な納骨堂が、お墓と同じように永代に渡って供養する場として認知されるようになっています。
納骨堂では、13年、23年、33年など一定の安置期間を決め、期間終了後は永代供養墓などに合祀(ごうし)する、また寺院によっては、期間終了後にお骨佛(遺骨で造る阿弥陀如来像)を造立するなどの方法がとられています。寺院を利用する場合でも、宗派を問われないことがほとんど。檀家になる必要がないため、お布施などの負担がないのも大きな特徴です。
最近は、継承者がいなくなった継承墓を墓じまい(今あるお墓を撤去し、遺骨を別の墓地に移転すること)して、納骨堂に改葬(お墓の引っ越し)する方法を選択する人もいるようです。
※納骨堂に遺骨を葬る場合は、埋めて葬るという意味がある「埋葬」ではなく、安置するという意味で「収蔵」という表現を用います。
・樹木葬(じゅもくそう)
樹木葬は、墓石の代わりにシンボルとなる木(花の咲く木や草花の場合もあり)を植えて、墓標(ぼひょう)にする方法です。樹木葬には、樹木の根元に合同で遺骨を埋葬する集合タイプと、個別に一つのスペースに木を植えて遺骨を埋葬する個別タイプがあります。
樹木葬の場合、遺骨を埋葬できるのは、許可を得た墓地や霊園のみ。樹木葬と聞くと、好きな木の根元に埋葬できるイメージがあるかもしれませんが、許可のない場所に埋葬すると死体遺棄になってしまうので注意が必要です。
・散骨(さんこつ)
散骨は、遺骨を粉骨(遺骨をパウダー状にする)して海や山などに撒くお墓を建てない供養の方法です。遺骨の一部を撒く部分散骨(残りはお墓などに収める)と、すべてを撒く方法があります。個人でも行えるほか、業者に委託して散骨に立ち会う立ち会い散骨、立ち会いなしの委託散骨があります。最近では、宇宙に撒く宇宙葬や風船で飛ばすバルーン葬なども登場しています。ただし、樹木散骨の場合は、事前に手続きが必要となり許可を得た土地で行うことになります。
散骨の際は、遺骨を2mm以下の粉骨にすること、散骨を禁止する条例を出している市町村があるので、そのような場所は避けるようにする必要があります。
・手元(てもと)供養
自宅に遺骨(遺灰)を置いて供養するのが手元供養(自宅供養)です。見た目にもきれいな骨壺を仏壇に置いたり、遺灰をアクセサリーにして身につけたりします。遺骨のすべてを手元に置く全骨安置とお墓や納骨堂への納骨をすませた上で、一部を分骨して手元に置く分骨安置の方法(お墓から一部を取り出して分骨する方法もあり)があります。分骨の場合は、分骨証明書が必要です。手元供養を検討する場合は、遺骨を保管している人が亡くなった時のことも視野に入れてみてください。
ここ数年で選択肢が増えたお墓と供養の方法を紹介しました。散骨などは新しい供養の方法ですが、残された人が「お墓がないのはちょっと寂しい」と感じることもあるようです。
先祖代々のお墓を大切にしたいという気持ち、亡くなった人を供養したいという気持ちは、誰しもが持っているものです。その中で、自分や家族のライフスタイル、気持ちに添ったお墓と供養の形を選べたら理想的です。終活の一環として、将来のお墓について考えたり話し合ってみるのもひとつの方法かもしれませんね。