車窓から見える風景をのんびりと眺めたり駅弁をじっくりと味わったり……。特急列車や新幹線の旅は、飛行機や車の旅とは異なる味わいがありますよね。そのような列車の旅をワンランクアップさせたのが、数年前からブームになっている「観光列車」です。
観光列車とは?
観光列車は、列車を移動する手段としてだけ利用するのではなく、列車に乗ることそのものを楽しむために運行する列車です。
観光列車の楽しみとは?
・車窓の景観を楽しめる
観光列車は、車窓の景観を眺められるように窓が大きく造られていたり、座席が窓側に向いて設置されていたりします。絶景地の新緑や紅葉などの季節の変化や移りゆく空の様子を、列車の中にいながら心ゆくまで眺められるのは、観光列車ならではの楽しみです。
・特別仕様のシートや凝ったインテリア
観光列車は、車体の外装や車内のインテリアに凝っているのが特徴です。シンプルですっきりとまとめられたインテリアからホテルのようなインテリアのものまで、デザインは様々。車内に一歩足を踏み入れると別世界が広がります。
・本格グルメや郷土料理を味わえる
観光列車は、移動時間が楽しいのはもちろん、車内で提供される食事が充実しているのも魅力のひとつ。上質な素材を使った見た目にも美しい御膳や、郷土料理、列車内のレストランでシェフが腕をふるったフランス料理や和食をいただけることも!
※食事の提供はなく、特別メニューのお弁当などを販売する観光列車もあります。
・旅の計画が立てやすい
飛行機や車での旅行とは違い、列車での旅は天候や渋滞に左右されることがありません。行き帰りの時間も決まっているので、安心感がありますね。
・片道(日帰り)プランが多い
好みに合わせた日程を選べる。観光列車での旅と聞くと時間がかかるイメージがあるかもしれません。観光列車の多くは、出発地から目的までの片道のみ利用できるプランがほとんどです。
乗ること自体を楽しむ観光列車には、数多くの魅力が詰まっています。特別な体験ができる人気の観光列車をご紹介します。
横浜から南伊豆を走る「ザ・ロイヤルエクスプレス」
東急と伊豆急行が運行する「ザ・ロイヤルエクスプレス(THE ROYAL EXPRESS)」は、JR横浜駅から伊豆急下田駅の区間を3時間15分で走る豪華観光列車。小田原駅を通過した後、車窓に広がる伊豆の美しい海を眺めながらのゆったりとした旅程を楽しめる観光列車です。
「ザ・ロイヤルエクスプレス」では、車内で食事を楽しみながら目的地下田駅に向かう「食事付き乗車プラン」と、車内での食事に伊豆での宿泊と観光をセットにした「クルーズプラン」を用意。食事とドリンクは、地元静岡の料理人や有名シェフが監修を担当。地元食材にこだわって作られた彩り豊かな山海の幸を楽しめるほか、プランによっては音楽家による生演奏を聞きながらの食事タイムも設けられています。
伝統工芸の組子(くみこ、釘を使用せずに木を組み付けて作る技術)やステンドグラスが各所にちりばめられた車内のインテリアは、落ち着いた雰囲気。選択するプランにより車両が分けられていますが、大人だけが利用できるシックな車両や親子で座れるファミリーシートが用意された車両も用意されています。これなら、3世代の旅行にも利用できそうですよね。
運転日:1ヶ月に5回程度運行(伊豆急下田駅発の列車もあり)※乗車は中学生以上のみ。乗車には事前の予約が必要で、乗車券は「THE ROYAL EXPRESS」のサイトから申し込みのみ。
近畿日本鉄道で賢島へ「観光特急しまかぜ」
近畿日本鉄道が運行する「観光特急しまかぜ」は、大阪難波(なんば)駅、京都駅、近鉄名古屋駅の各駅から賢島(かしこじま)駅までの区間を結ぶ観光特急列車です。通常の観光列車のような事前予約は不要で、乗車券(普通運賃+特急料金+しまかぜ特別車両料金)を購入するだけ。空席があればいつでも利用できます。片道2~3時間(出発地により異なる)の旅程です。
ブルーを基調にしたさわやかなカラーリングの車体が特徴の「観光特急しまかぜ」。3列配置で前後の間隔が125cmもあるプレミアムシートのほかに、床を通常よりも72cm高く設計した展望車両、グループや家族での利用におすすめのサロン席、和風個室、洋風個室が揃います。プライベートに過ごせるサロン席、和風個室、洋風個室は、いつも発売直後に埋まってしまうほどの人気なのだそう。
座席でいただけるしまかぜ限定のお弁当「しまかぜ弁当」や、カフェ車両のメニュー「海の幸ピラフ」や「松坂牛カレー」などを楽しめます。
運転日:毎日 ※乗車券は近畿日本鉄道の窓口とインターネットサイトから購入可。
JR四国で旅する「四国まんなか千年ものがたり」
「四国まんなか千年ものがたり」は、四国の中央部を走行する観光列車です。列車のインテリアのモチーフは古民家。木をふんだんに使用した空間は列車内とは思えない格調高い佇まいです。座席は全席がソファ席で、車両ごとに異なるインテリアデザインを採用。春夏秋冬の季節をテーマにした色使いとデザインが施された車両は、左右両方向の車窓を楽しめる座席の配列となっています。
車内では、地元の新鮮な野菜や瀬戸内海、紀伊水道で獲れた魚介類、ていねいに育てられた「讃岐牛・讃岐夢豚・讃岐コーチン」や「阿波牛・阿波ポーク・阿波尾鶏」を使ったメニューを用意。各種揃った地酒の飲み比べも可能です。
特別な日の乗車にオーダーできる「花束&メッセージサービス」、「香川漆芸」や徳島県を代表する陶器「大谷焼」、「阿波正藍しじら織」を鑑賞できる車内に設けられた伝統工芸のギャラリーなども見逃せません。
「四国まんなか千年ものがたり」には、多度津(たどつ)~大歩危(おおぼけ)の区間を走る「そらの郷紀行」と、大歩危~多度津区間の運行する「しあわせの郷紀行」というプランがあります。約2時間半の旅程を楽しむには、乗車券の他に特急券とグリーン券の購入が必要です。食事は別料金。
運転日:金、土、日、月の週4日が基本。※特別企画での運行もあり。乗車券は全国のみどりの窓口や旅行代理店で購入可。
贅沢を尽くしたJR九州の列車旅「ななつ星in九州」
「ななつ星in九州」は、2013年(平成25年)にJR九州が運行を開始した豪華寝台列車です。14あるゲストルームの全てがスイート・ルーム(シャワー、トイレ完備)の造り。重厚感あふれる車内の各所には、日本の職人の技を生かした調度品を配置しており、クラシカルなホテルがそのまま車両になったかのようです。
JR博多駅を起点にした1泊2日のコースでは、長崎と熊本を周遊。3泊4日のコースでは、2泊は車内、2泊は現地の旅館に泊まりながら、福岡、大分、熊本、宮崎の4県をめぐります。自然と食、温泉など九州の魅力をじっくり堪能できるコースが組まれています。
乗車中に提供されるのは、九州の恵まれた自然環境の中で育った旬の食材を、九州を代表するシェフや板前たちが丁寧に作り上げた逸品ばかり。寿司、フレンチ、和食の贅沢なラインナップで楽しめますよ。
運転日:季節により異なります。※中学生以下乗車不可。乗車時はスマートカジュアル、車内での夕食時はセミフォーマルのドレスコードあり。乗車券は駅の窓口では購入不可。「クルーズトレインツアーデスク」で申込み、または旅行代理店が企画したツアーへの申し込みになります。
シニアに人気の観光列車について紹介しました。
飛行機や車での旅も楽しいものですが、観光列車の旅もおすすめ!旅のワクワク感が味わえますよ。